à la lettre

ラカン派精神分析・精神病理学に関するいろいろ

新刊『創造と狂気の歴史——プラトンからドゥルーズまで』刊行のお知らせ

 新刊『創造と狂気の歴史——プラトンからドゥルーズまで』講談社選書メチエより刊行されます。来週、3月12日ごろから書店に並び始めるようです。
 京大の講義をもとにしたものですので、読みやすく仕上がっているはずです。タイトルからわかるようにフーコーの狂気論、特に「外の思考」などで頂点を迎える特定のタイプの「創造と狂気」論を現代から再検討しようとするものです。現代思想入門としても、病跡学(および精神病理学)のパラダイムの再考としても読めると思います。
 詳細目次は下記のとおりです。どうかよろしくお願いいたします。


創造と狂気の歴史



はじめに――創造と狂気は紙一重

第一章 「創造と狂気」の関係を問う

  • 狂気がもたらすプラスの恩恵(1)――症例エメ
  • 狂気がもたらすプラスの恩恵(2)――草間彌生
  • 病跡学とは何か
  • 病跡学の歴史
  • 統合失調症中心主義と悲劇主義的パラダイム
  • 日本における「創造と狂気」論
  • 近代の病としての統合失調症
  • 病跡学の思想史的検討の必要性

第二章 プラトン――神的創造と狂気

第三章 アリストテレス――メランコリーと創造

  • 神的狂気か、メランコリーか
  • 倫理的異常としてのメランコリー
  • メランコリー=天才説
  • ユダヤキリスト教の誕生とダイモーンの変貌
  • 追放されるダイモーン

第四章 フィチーノデューラー――怠惰からメランコリーへ

  • 「うつ」の2つのイメージ
  • 修道生活における「怠惰」
  • 中世の悪魔憑き
  • 「うつ」の価値転倒
  • 《メレンコリアI》
  • ダイモーンに取り憑かれた心

第五章 デカルト――狂気に取り憑かれた哲学

  • 近代的主体は、狂気のなかから生まれる
  • デカルトフィチーノ
  • 3つの夢
  • 「コギト」の根拠は無限に先送りされる
  • デカルトは狂気を追放したのか?

第六章 カント――狂気を隔離する哲学

  • ついに近代的主体が問題となる
  • 神から断絶した子ども
  • 狂気との出会いと「理性の不安」
  • 『視霊者の夢』――狂気と(ふたたび)出会う哲学
  • 純粋理性批判』――統覚と第3アンチノミーにおける狂気
  • 『実用的見地における人間学』――ふたたび狂気を分類する
  • カントの哲学は狂気を隔離できない

第七章 ヘーゲル――狂気を乗り越える哲学

  • デカルト、カント、ヘーゲル
  • 狂気を乗り越える哲学
  • 「絶対知」への疑念
  • 芸術終焉論
  • 表象不可能性による芸術

第八章 ヘルダーリン――ついに統合失調症が現われる

第九章 ハイデガー――詩の否定神学

第十章 ラカン――「詩の否定神学」の構造論化

第十一章 ラプランシュとフーコー――ヘルダーリンと父の問題

第一二章 アルトーデリダ――病跡学の脱構築

第十三章 ドゥルーズ――「詩の否定神学」からの逃走

  • 「出来事」と統合失調症
  • 「一度限りの決定的」な出来事からの逃走
  • 草間彌生横尾忠則
  • すれちがう二人
  • 『意味の論理学』――「深い」文学と「浅い」文学
  • 表面へと向かうドゥルーズ
  • 『批評と臨床』――病跡学的プラトン主義の転倒
  • 現代文学とデータベース
  • ルイス・キャロルの病跡
  • 〈他者〉は存在しない
  • 「コミュニケーションの障害」によるコミュニケーション
  • レーモン・ルーセルの病跡――「手法」による「栄光の感覚」の再現の試み
  • 「手法」による「栄光の感覚」の再現の試み
  • ルイス・ウルフソンの病跡――母国語を殺すこと、あるいは賭博の効能
  • 文学と偶然
  • ドゥルーズの「創造と狂気」論の特徴

おわりに――「創造と狂気」はどこへ向かうのか?


参考文献
初出一覧
あとがき