à la lettre

ラカン派精神分析・精神病理学に関するいろいろ

『思弁的実在論と現代について』ほか

 千葉雅也さんの『思弁的実在論と現代について』が発売になりました。私は、第9章の「ポスト精神分析的人間へ」で対談相手として少しだけ登場しています。
 以前『atプラス』30号で行った対談の再録ですが、第二部の「現代」パートの幅の広さの中に置かれるとまた変わった読み口が出てくるかもしれません。第1部の思弁的実在論の整理も要注目です。

 千葉さんは最近は下記のAIをめぐる対談も話題になりましたが、これを読みながら、そういえば昔(『現代思想』2015年5月号)おこなった鼎談でも、「不可能なものや無限ということが知性において問題だった時代には人工知能は不可能だったかもしれませんが、逆に時代が人間の知性を人工知能的にしていったら、そりゃあ人工知能はできるようになるだろう」と発言されていたことを思い出しました。
 たしかに、AIが人間に近づくか/人間を超えるかを考える一歩手前で、そもそも人間が機械に近づいていないかという点と、「無意識の廃絶」を絡めて考える必要がありそうです。
gendai.ismedia.jp

 この文脈では、吉川浩満さんの新刊『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』 が大いに参考になるでしょう。
 本書では、いわゆる「ポストヒューマン」やフーコーの「人間の終焉」を、現代思想よりもむしろAIやその他サイエンスとの関係から考えるための綿密な調査がされており、人文系読者にとってとても有益な本です。

 また、ドゥルーズ関連では、小倉拓也さんの『カオスに抗する闘い』も発売になりました。
 前評判どおりの緻密に書かれた著作で、ドゥルーズにおけるクラインとラカン等の精神分析の線もじっくり論じられつつ、「カオスに抗する闘い」というモチーフが探求されます。『差異と反復』と『哲学とは何か』におけるカオスの整理等、臨床的にもヒントになりそうです。