à la lettre

ラカン派精神分析・精神病理学に関するいろいろ

2017年の6冊

 現在発売中の『図書新聞』3332号の読書アンケートに今年の下半期に読んだ次の3冊を挙げています。

コレクティフーーサン・タンヌ病院におけるセミネール
コレクティフーーサン・タンヌ病院におけるセミネール
共依存の倫理―必要とされることを渇望する人びと―
共依存の倫理―必要とされることを渇望する人びと―
ハームリダクションとは何か 薬物問題に対する,あるひとつの社会的選択
ハームリダクションとは何か 薬物問題に対する,あるひとつの社会的選択

 それぞれの本についての短いコメントは、紙面を御覧ください。『図書新聞』は定期購読や電子版の購読も可能です。


www.toshoshimbun.com


 また、紹介するのを忘れておりましたが、同紙の上半期の読書アンケートには、下記の通り寄稿しました。

①千葉雅也『勉強の哲学 来たるべきバカのために』(文藝春秋
②松本敏治『自閉症津軽弁を話さない』(福村出版)
金泰泳在日コリアン精神障害』(晃洋書房

『勉強の哲学』は、いっけん平易に書かれた自己啓発書のようにみえるが、そのロジックはラカン派の現代的展開と現代の哲学をミックスした非常に高度なものであり、特にその実践編である欲望年表の発想は精神分析的でもある。「ノリ」は神経症、「アイロニー」は精神病、「享楽的こだわり」は自閉症と考えれば臨床にも応用可能だろう。『自閉症津軽弁を話さない』は、しばしば感づかれていた「自閉症の子どもは方言を話さない」という印象を約10年にわたる綿密な調査で検証した労作。さっそく『勉強の哲学』の議論を応用すれば、言語に独特の「享楽的こだわり」をもつ自閉症者は、「方言」のように普遍化された「ノリ」(ベタ化された享楽的こだわり)とは縁遠いのであろう。『在日コリアン精神障害』は、ほとんど先行研究がないこの分野にあって、おそらくははじめてなされた詳細なライフヒストリー研究であり、貴重である。筆者らは現在、在日コリアン精神障害の問題に取り組んでいることもあり、非常に興味深く読んだ。

勉強の哲学 来たるべきバカのために
勉強の哲学 来たるべきバカのために
自閉症は津軽弁を話さない 自閉スペクトラム症のことばの謎を読み解く
自閉症は津軽弁を話さない 自閉スペクトラム症のことばの謎を読み解く
在日コリアンと精神障害―ライフヒストリーと社会環境的要因
在日コリアンと精神障害―ライフヒストリーと社会環境的要因