à la lettre

ラカン派精神分析・精神病理学に関するいろいろ

分析における構成の仕事

この文脈で、分析における「解釈」「構成」を語ればどうなるだろうか。
解釈によって、性的虐待の主題が再構成されることをフロイトは発見した。最初は、フロイトは「ヒステリーの原因は幼児期の性的暴力のもたらした外傷である」という学説を発表するにいたった。
しかし、その説は後にエディプス・コンプレックスの概念の導入以降、「性的虐待は患者の作りやすい幻想」とでもいうべきものになっていく。ラカンの言葉でいえば、「エディプス・コンプレックスとは心的現実」ということである。
フロイトが「分析における構成の仕事」で精細に書いているとおり、分析家の解釈は恣意的なものではない。患者が自由連想で語る内容に対して、分析家が勝手な解釈を与えている、ということではないのである。もし、解釈が恣意的なものであるならば、解釈は分析家の好み、とでもいうべきようなものに堕してしまう。
フロイトは「分析における構成の仕事」において、解釈を考古学になぞらえ、「構成」あるいは「再構成」という風に再定義する。ラカンは第一セミネールでこの構成の仕事の「歴史的な事実」という側面を引用している。
フロイトの言う「原抑圧につづく後期抑圧」は「常に先行する抑圧からの牽引力」を受ける、ということの意味は、症状(S2)が「原抑圧された思考の形式(S1)に合致するように」構成される、ということではないだろうか。
このように考えることによって、分析家によって与えられた解釈が患者に「肯定」されたり「否定」されたりする、という技法上の問題を考えることができる。フロイトの「否定Verneinung」や「肯定Bejahung」は、何よりもまず、解釈に対する患者の反応という観点から作り出された概念である。
このような文脈づけがあって、はじめて『フロイト技法論』の抵抗と転移についての冒頭の四章がいきいきとしたものとして読めるようになる。と思う。


↓S1と主体なき知、症状に関して参考になります。
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