à la lettre

ラカン派精神分析・精神病理学に関するいろいろ

『現代思想』と『季刊iichiko』に寄稿

 10月末発売の2つの雑誌に寄稿しています。
 『現代思想』 2018年11月号、特集は「「多動」の時代 ―時短・ライフハック・ギグエコノミー」ですが、私はADHDについて短い小論を書いています。


 『季刊iichiko』140号には、「享楽社会とは何か?」を書いています。ラカンフーコードゥルーズの議論(特に安全装置論、管理社会論)の関係を検討するもので、もともとは『享楽社会論』の序論にしようと思っていたものです。
 この号の特集は「ラカンの剰余享楽/サントーム」となっています(手にとって初めて気づいたのですが、新宮さんたちも特集にご協力されているようです。目次などはこちらからどうぞ。)

千葉雅也氏との対談講演会「思弁的実在論と精神分析」開催のお知らせ

 2018年11月29日(木)に、新刊『意味がない無意味』を刊行された千葉雅也氏をお招きし、対談形式の講演会「思弁的実在論精神分析」を京都大学で開催いたします。入場無料、参加自由のイベントですので、ご興味のある方は奮ってお越し下さい。
 詳細はポスターをご参照ください。
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 日時:2018年11月29日(木)16:30-18:00
 場所:京都大学 総合研究3号館 共通155教室(1F)
 入場無料(どなたでもご参加いただけます)

連続研究会「Autres écritsを読む」開催のお知らせ

 当研究室では、現代フランス精神分析思想における諸々の横断的・学際的な研究を活性化させるため、さまざまな分野の研究者・臨床家を招いた連続研究会を開催いたします。今回は、精神分析ジャック・ラカンの第二の主著と呼ばれる『Autres écrits(他のエクリ)』を主なテーマとして取り上げ、それぞれの角度から検討してまいります。
 ご興味のある方は、ふるってご参加ください。いずれの会も、参加無料です(どなたでもご参加いただけます)が、土曜日にあたり建物のドアが閉まっている都合上、お越しの際は必ず定刻にお集まりくださいますよう、お願いいたします
 また、ご参加の方は『Autres écrits』のテクストをお持ちくださるようにお願いいたします


第一回研究会「Autres écritsを読む——哲学の視点から」
2018年10月27日(土)14時~ 東京大学駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム
司会:松本卓也京都大学
提題者:佐藤朋子(金沢大学)、工藤顕太(早稲田大学
討論:向井雅明(精神分析相談室)


第二回研究会「Autres écritsを読む——心理臨床と精神医療史の視点から」
2018年11月17日(土)14時~ 京都大学人間・環境学研究科棟3F323教室
司会:松本卓也京都大学
提題者:春木奈美子(京都大学)、上尾真道(京都大学
討論:向井雅明(精神分析相談室)


第三回研究会「Autres écritsを読む——思想史と精神病理学の視点から」
2018年12月15日(土)14時~ 東京大学駒場キャンパス18号館4階コラボレーションルーム
司会:松本卓也京都大学
提題者:信友建志鹿児島大学)、松本卓也京都大学
討論:向井雅明(精神分析相談室)


※本研究会は、平成30年度伊藤忠兵衛基金の助成を受けた課題「メンタルヘルス時代の新たな学際的研究における現代フランス精神分析思想の役割」の一環として開催されるものです。問い合わせ等は、こちらまでお願いいたします。

『発達障害の精神病理1』に寄稿

 先日発売になった『発達障害の精神病理1』に「自閉症スペクトラムと〈この〉性」を寄稿しています。本論集は、あの「分裂病の精神病理」シリーズを引き継がんとする意志をもって始められたもので、今のところ3年間の継続が予定されているようです。
 拙論では、自閉症スペクトラムがしばしばアルゴリズム的な理性のあり方として論じられることに対して、それとは全く逆の「heccéité」の観点から自閉症スペクトラムを論じました。

発達障害の精神病理 1
Posted with Amakuri at 2018.10.3
鈴木 國文, 内海 健, 清水 光恵

 非常に読み応えのある論集に仕上がっていると思いますので、ぜひお手にとって見てください。

『思想』2018年9月号刊行のお知らせ

『思想』2018年9月号(8月28日発売)では、「政治と精神分析の未来」と題する小特集が組まれています。

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本特集は、昨年の社会思想史学会でのセッションがもとになったものです。私も翻訳(『疾風怒濤精神分析入門』の著者、片岡一竹氏との共訳)で参加しました。
翻訳は、Éric Laurent, L’envers de la biopolitique : une écriture pour la jouissance, Navarin, 2016(『生政治の裏面』)の第10章、Le parlêtre politique(「政治的話存在」) です。
特集以外も、精神分析関係の非常に興味深い論文が揃っているようです。

目次などはこちらからどうぞ。
思想 2018年9月号 - 岩波書店

『思弁的実在論と現代について』ほか

 千葉雅也さんの『思弁的実在論と現代について』が発売になりました。私は、第9章の「ポスト精神分析的人間へ」で対談相手として少しだけ登場しています。
 以前『atプラス』30号で行った対談の再録ですが、第二部の「現代」パートの幅の広さの中に置かれるとまた変わった読み口が出てくるかもしれません。第1部の思弁的実在論の整理も要注目です。

 千葉さんは最近は下記のAIをめぐる対談も話題になりましたが、これを読みながら、そういえば昔(『現代思想』2015年5月号)おこなった鼎談でも、「不可能なものや無限ということが知性において問題だった時代には人工知能は不可能だったかもしれませんが、逆に時代が人間の知性を人工知能的にしていったら、そりゃあ人工知能はできるようになるだろう」と発言されていたことを思い出しました。
 たしかに、AIが人間に近づくか/人間を超えるかを考える一歩手前で、そもそも人間が機械に近づいていないかという点と、「無意識の廃絶」を絡めて考える必要がありそうです。
gendai.ismedia.jp

 この文脈では、吉川浩満さんの新刊『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』 が大いに参考になるでしょう。
 本書では、いわゆる「ポストヒューマン」やフーコーの「人間の終焉」を、現代思想よりもむしろAIやその他サイエンスとの関係から考えるための綿密な調査がされており、人文系読者にとってとても有益な本です。

 また、ドゥルーズ関連では、小倉拓也さんの『カオスに抗する闘い』も発売になりました。
 前評判どおりの緻密に書かれた著作で、ドゥルーズにおけるクラインとラカン等の精神分析の線もじっくり論じられつつ、「カオスに抗する闘い」というモチーフが探求されます。『差異と反復』と『哲学とは何か』におけるカオスの整理等、臨床的にもヒントになりそうです。